だから、平面プロレスはやめられない
新藤 ブキチ
レイテ島オルモック港からリボンガオに移動の車の中から見たピンクの花は、サルスベリかと思ったら、ブーゲンビリアだった。青い空と木々の緑と大地のナカで鮮やかに咲いていた。
今回も暖かく迎えてくれたティムさん一家の住む水牛家族の農園にも、ブーゲンビリアは咲いていた。夏の日本の花はサルスベリで、フィリピンはブーゲンビリアだと思った。
今年のスタディ・ツァーは、山形鶴岡チームと併せて16名の大人数だ。
今年も、この豊かな水牛家族の地で平面プロレスができる! 幸せだと思った。モッコリ(相棒の宮崎さんのこと)とタイヤで戦うことを決め、ティムさんにタイヤを用意してもらったが、庭に転がっている大きなタライに目がとまった。犬・ねこ・ニワトリが自由に歩きまわるのどかな庭で、タライが大口を開けてあくびをしていた(ように見えた)。
とてもシュールに見え、ミロの農園の絵を思い出した。こんな大口を開けて悠々と寝ている奴はここにしかいない。戦う相手をこのタライに決めた。
タライはこちらではビナンガーナという。相手に不足なし。戦いの前夜は武者震いが止まらなかったが、大事な試合のため、気を静めて体を休めた。
モッコリのゴングと共に戦いは始まった。なんという懐の深さだ。捕まり、呑み込まれたら一挙に負けてしまう。タライの持つこの空間性は何なんだ。つかみどころがない。
戦っているうちに気がついた。俺は日本人でいつもセコセコしている。その性(さが)が戦いに出てきて、この大らかな空間に戸惑っているのだ。
世界は広い。俺はせまい。試合は勝つには勝ったが、ほんとうに勝ったのはタライだった。負けるが勝ち。強いて争わず、相手に勝ちを譲るのが結局は勝利となる。恐るべきビナンガーナ。俺は日本に帰って出直そう。そして、もう一度戦ってくれ! ビナンガーナ!
観客の子どもたちは静かだった。空間性のちがうもの同士の戦いがシュールに見えたのだろう。
俺はなぜかなわなかったのだろう。俺が日本でどんなに働こうと、ここレイテには人間生活の桃源郷があるからだ。笑顔と優しさが違う。
平面プロセスは、こういう違いを体で感じるから続いているのかもしれない。
来年はこれないかもしれないが、また必ずここにこよう!
水牛家族、ありがとう。
もう一度、プロレスラーとして大地に足がうかないようがんばろう。
とりあえず、11月の水牛家族毛呂山合宿に向けて。
山形・鶴岡のみなさん、今回は平面プロレスを見ていただくことができませんでした。
毛呂山でお会いしましょう!
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